まぬけじる日記

もうすぐ不惑を迎える男のまぬけな日常を描いた雑記です。Twitter:@manukejiru

睡眠不足は八村塁をも悩ませる

 NBAの2019-2020シーズンが開幕した。ファンやメディアの間では、「今シーズンは5年ぶりに始まるのが楽しみなシーズンだ」とボジョレーヌーボーみたいなことが言われている。その理由は極めて単純明快なもので、優勝するチームの予想がつきにくくなったということだろう。

 過去5年連続でファイナルに進出し、3度の優勝を果たしたGolden State Warriorsは、エース格のKevin Durantが抜けてしまい、もはや優勝候補とは呼べなくなってしまった。また、昨シーズン優勝のToronto Raptorsからは、ファイナルMVPのKawhi Leonardがこれまた移籍してしまい、今度は移籍先のLos Angeles Clippersが優勝候補の一角として注目されている。また、同じLosAngelsに本拠を置くLakersも、昨年は史上最強の選手とも言われるLebron Jamesの孤軍奮闘という感もあったが、3度のブロック王に輝いたAnthony Davisが移籍してきたことにより、これもまた優勝候補のひとつに挙げられるまでになった。また、NBA公式サイトでは、開幕前のランキング第一位に、昨年のシーズンMVPのGiannis Antetokounmpoを擁するMilwaukee Bucksを挙げている。

 昨年までは「どうせGolden State Warriorsが勝つだろうから、シーズンは飛ばしてプレーオフから見ればいいや」という雰囲気が漂っていたことを思うと、今年は優勝候補のチームがいくつもあって、ファンやメディアの間でも喧々囂々の議論がなされている。やはり何事も先が見えすぎてしまっても面白くないのだ。

 また、日本のファンにとっては、八村塁と渡辺雄太の2人の日本人選手の動向からも目が離せない。特に、今年日本人選手として初めてドラフト1巡目で指名を受けた八村塁は、大学時代の実績からしても、Rookie of the Yearは難しいかもしれないがAll Rookie 1st Teamに選ばれるような活躍をすることも不可能ではないと思う。残念ながら、彼が入団したWashington Wizardsは今シーズンは下から数えた方が早いくらいの弱いチームになりそうだが、逆を言えば彼のようなルーキーにも十分な機会が与えられるような環境にあるということだ。

 これはNBAに限らず、全てのアメリカのプロスポーツに言えることだが、アメリカでプロスポーツ選手として成功するためには、当然卓越した身体能力や技術を持っていることが必要となるが、それ以上に過酷な遠征に耐えられる精神的・肉体的なタフさが求められるようである。例えば、今シーズンのNBAでは、2019年10月22日から2020年4月15日の176日間がレギュラーシーズンとされており、選手たちはこの期間に82試合をこなす必要がある。ざっと計算して2日に1日は試合をしなければならないことになる。これだけでも相当大変なはずだが、そのうえに長距離の移動も強いられることになる。

 先日、ESPNPodcastを聞いていたら、強豪チームのPhiladelphia 76ersのTobias Harrisという選手が、インタビューのなかで、「数年後、NBA選手の睡眠不足問題はNFLの脳震盪問題と同じレベルで取り上げられることになるだろう」という発言をしていた。これについて、長年NBA選手として活躍していたMatt Barnes氏がこれに同調して「例えば、延長戦を終えて、記者会見でインタビューに答えていると夜の12時近くになっている。翌日に試合がある場合には、その夜のうちに時差のある次の遠征先に移動して、朝3時にホテルにチェックイン、ようやく眠れるのは朝5時などということもある。」と話していた。どうやら、スタジアムの華美な照明や大歓声のなかで試合をしていると、時として昂揚した気分を鎮めて眠りにつくのも困難なものであるらしい。

 八村選手も大学時代はゴンザガ大学という強豪校に在籍し、短期の遠征ならば経験はあるはずだが、これほど長期に渡る遠征は経験がないはずである。学生時代にはなかった誘惑も多いことだろう。八村選手がNBA選手として結果を残すためには、コート上の戦いのほかにも、遠征時の睡眠不足という難敵にも対処する必要があるのだ。