まぬけじる日記

もうすぐ不惑を迎える男のまぬけな日常を描いた雑記です。Twitter:@manukejiru

桃太郎は別に多様性を求めてはいなかったと思う

 10月17日(土)の日本経済新聞朝刊に掲載されていたJTの広告が目に留まった。曰く、「桃太郎はなぜこの三匹を仲間にしたのか」とのことである。


 それに続く20行ほどのコピーを読むと、桃太郎はチームに多様性を取り入れ、ある種のケミストリーを起こそうという戦略のもと、犬、猿、キジの三匹を仲間にしたのだろう、という内容である。


 企業の広告の内容についてくそまじめに論評するのは無粋の極みであるが、どうにも気になってしまったので、個人的に思うところを書き連ねることにしたい。


 そもそも桃太郎は本当に自ら望んでこれらの三匹を仲間に引き入れたのだろうか。


 少なくとも僕が知っている桃太郎では、彼自身、別に鬼退治の仲間を欲していたような記述もなかったように記憶している。なんなら単身鬼ヶ島に乗り込んで暴れるつもりだったのかもしれない。桃太郎も結構無謀なやつである。


 むしろ鬼退治のような偉業を成し遂げるためには、他人の力を頼まず、己一人でやり遂げるくらいの向こうみずさが必要なのだという示唆なのかもしれない。


 まあ、結果的には運良く犬、猿、キジといった仲間とともに鬼ヶ島に乗り込むことになったわけだが、それも数多の応募の中から厳正な選考の末にこの三匹を選んだということではなく、猿も犬もキジも、桃太郎が所持しているきびだんごに目が眩んで鬼退治に加わっただけのことである。そこには、JTの広告が言っているような、「多様性を取り込もう」などという戦略が介入する余地もない。


 「なんだか知らんが、気付いたら多様性溢れるメンバーになっていた」というのが正直なところなのではないだろうか。


 桃太郎も、せっかく仲間にするんだったら、カレリンとグレーシーとヒョードルを引き連れて行きたかったと思っていたかもしれない(格闘技には疎いので、「世界最強の格闘家」のキーワードでググってみたら出てきた3人である)。


 ただ、「鬼退治」などという馬鹿げた理念に共鳴してくれる人もおらず、共鳴できない馬鹿な理念を補えるほどの報酬も用意できなかったため、仕方なくきびだんごに釣られて付いてきた動物を連れていかざるを得なかったのだろう。


 思うに、多様性を取り入れて成功している組織というのも、初めのうちはこのような感じだったのかもしれない。「うちには猿と犬とキジしかいないけど、猿はツメ、犬はキバ、キジはクチバシという、頼りないけど唯一の武器を最大限活かしていこうね」くらいのノリがたまたま思いもよらない成果を上げてしまった、というくらいのことに思っておいた方が良いだろう。


 所詮神でもなんでもない人間が、戦略的(笑)に多様性を取り入れたとしても、必ずしも良いケミストリーが生まれることはなく、むしろその逆に作用してしまうことも少なくないのではないだろうか。